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第4回 ズボラに生きよう

斎藤登志子
1957年生まれ。
人生の3分の1以上をうつ病患者として過ごし、現在も記録を更新中。二男二女の母親のかたわら、翻訳業にもたずさわる。特技・ふて寝、ドタキャン、プチ家出。

            斎藤登志子

 「どうすればウツにならずにすみますか」と、よくたずねられます。

 答えは単純です。「ズボラになること」です。

 けれども、ズボラになれと言われてそうなれるような人なら、はじめからウツにはなりません。

 うつ病になるような人は真面目で几帳面で責任感が強く、完全主義だからです。

 ところが、こういう人たちは、こと手を抜く、怠ける、いい加減にするという点に関しては、悲しくなるほど下手くそなのです。

 普通、手を抜く、怠けるといったことは、あまり良くないことととられがちです。

 けれども、人間、四六時中気を張りつめているわけにはいきません。みな、どこかでいい加減になることで心のバランスを保っているのです。

 ですから、ウツになる人は思い切った価値観の転換をはかって上手にズボラになることを学ぶ必要があります。

 くそ真面目はただの真面目に、几帳面はいい加減に、強すぎる責任感はほどほどに、完全主義は適当になりましょう。

 することが十あったとしたら、そのうち二つできればよしとします。四角い部屋は丸く掃く、明日できることは今日するな。疲れたり嫌なことがあったときは布団をかぶってふて寝しましょう。普通の人と同じように行動していたら疲れてしまうので、あらゆることに遅刻、早退を心がけます。後片付けもせずに「お先に失礼」と帰ってくる面の皮の厚さも必要でしょう。時にはドタキャンもあり、と肝に銘じます。と、うつ病の人にはこのくらい言わなくてはダメです。

 それでもズボラになれないという人は、完全主義がそれほどたいしたものではないということを知るといいでしょう。

 完全主義の人にはオール・オア・ナッシング(全か無か)といった極端な性癖があります。納得のいくようにできなければまったく手をつけないという態度です。このことが逆に何かをするときの妨げとなり、効率を下げているのです。

 ためしに完全主義から受ける利益と不利益を紙に書き出してみるといいでしょう。不利益のほうが多いことに驚くはずです。

 また、完全主義の背後には恐れがひそんでいると思われます。おそらくは失敗することへの恐れでしょうが、実際には成功した時よりも失敗した時のほうが益になっていることが多いものです。

 そもそも完全なものなど、この世に存在しないのです。みな、どこか不完全で欠けているところがあるものです。

 ですから、はじめから目標を一〇〇パーセントに設定するのではなく、八〇パーセントか六〇パーセントぐらいに設定するといいでしょう。

 すると、以前よりもたやすく目標を達成することができ、達成感や満足感を味わうことができます。これは学業、仕事、家事、教会の奉仕などすべてにあてはめることができます。

六〇パーセントの幸せ

あまり多くを望んではいけません。
ほどほどでいいでしょう。
完全にしようなんて思わないでください。

そもそも完全ってどういうことですか。
人によって完全のものさしは違うのではありませんか。
あなたの持っている完全のものさしが、まちがっていたらどうしますか。
絶対に正確だと言いきれますか。

全力を尽くしたからといって、
必ずしもまわりの人が喜ぶとはかぎりません。
かえって、あなたのこだわり(・・・・)にふりまわされて
迷惑しているかもしれません。

あなたの完全のものさしは、あなたにしか通用しないものです。
それで人をはかるのはやめましょう。
それで自分をしばるのもやめましょう。

完全主義とは結局、自己満足なのです。
そこが完全主義の落とし穴です。

六〇パーセントできればいいのです。
百点満点の人生なんてありません。
(『傷つきやすいあなたへ』木村藍 著、文芸社より)

(「いのちのことば」より)
by Bible-door | 2008-11-18 16:01 | ウツと上手につき合うには